私もランニングを始めた当初は、「苦しい思いをせずに速くなれるはずがない!」と自分で決めつけていました。この考え方は、学生時代に何かしらの競技に打ち込んでいた人によく見られるようですね。
先輩の指示に従い、何時間も炎天下のグラウンドを駆け回り、部活動中に水を飲むことさえ最大の「悪」とされた時代を経験しました。その頃の青春は、スポーツにおいて「ラクして強くなる」などという考えはまったくありませんでした。
スポーツは苦しみを伴うものであり、自分を追い込むことであり、精神的な鍛錬であり、上下の関係であり、汗とカビのにおいでもあるのです。このような感覚が私たちの心に深く刻まれているため、この歳になっても「スポーツ」という言葉には手を抜けません。
このタイプの人たちは、十数年ぶりに体を動かそうとジョギングを始めても、かつての体育会"魂"が再び芽生えてきて、知らず知らずのうちに「本気で走らなきゃ!」という気持ちになってしまいます。
恐い先輩が見ているわけではないのに、のんびりと走っている自分が許せないと感じるのです。気がつくと、息を荒くしゼイゼイと鬼のような表情で走っていたりします。このような状況では、中年のおじさんやおばさんにとって継続することは難しく、「ジョギング=苦しい、辛い」というイメージが定着し、メタボからの脱却は夢のまた夢となってしまいます。
しかし、ダイエットに関しては興味深い事実があります。早く走るよりもむしろゆっくり走った方が、より多くのカロリーを消費することが科学的に証明されています。
つまり、「ゆっくりでも大丈夫ですよ」ということではなく、「ゆっくり走らなければダメ」なのです。ゆっくり走り続ければ「有酸素運動」となり脂肪を燃焼しますが、ある一定の強度(スピード)を超えると「無酸素運動」になり、エネルギー消費の対象が脂肪ではなく糖に切り替わってしまいます。息が切れるほど自分を追い込んで早く走り続けても、消費できたのは「糖」であり、「脂肪」ではありません。ですから、達成感にもかかわらず、脂肪燃焼が進んでいないことになります。
もちろん、レースに出場するような競技志向の人は、スピード練習も必要です。しかし、ただ単にダイエットのためだけに走る人にとっては、「ゆっくりジョグ」が基本です。走りながら普通に会話ができる程度のペースが脂肪燃焼には最適なようです。「ジョギング始めてみようかな」と思ったあなた、まずは頭の中の悪しき「体育会"魂"」を追い払うことから始めましょう。